治安と安全の世界統計
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犯罪被害率の地域差を読む前に――「起きた場所」と「届けられた場所」は同じか

治安と安全について、世界の統計を定点観測する

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地域差は、数字の差だけでは見えない

犯罪被害率を地域ごとに比べると、「どこが安全で、どこが危険なのか」を知りたくなる。しかし、地域別の数字は、実際に起きた被害をそのまま写したものとは限らない。警察や検察が把握した事件、被害者や周囲の人が届け出た事件、行政上の地域に分類された事件が、統計の土台になるからだ。

同じ種類の被害でも、相談先の認知度、届け出のしやすさ、都市部と人口の少ない地域の人の移動、インターネットを通じた接触などによって、記録される場所は変わりうる。被害者が生活する地域と、被害が発生した地域、事件を受理した機関の所在地が一致しない場合もある。

この点は、地域差を「犯罪の発生しやすさ」だけで説明することの難しさを示している。数値が高い地域には、被害が多い可能性だけでなく、把握や届け出が進んでいる可能性も含まれる。反対に、数値が低い地域でも、被害が見えにくいだけということがあり得る。

受理人員は「被害率」と同じではない

今回確認できる法務省の資料は、罪名別に被疑事件を受理・処理した人員を示すものだ。ここで数えられているのは、犯罪被害に遭った人の数そのものではなく、被疑事件として受理された人員である。したがって、人口あたりの犯罪被害率や、地域住民が被害に遭う確率を直接表す指標ではない。

資料上、2024年に受理された被疑事件の総数は358291人、2023年は348135人だった。一方、既済となった被疑事件の総数は、2024年が339315人、2023年が330518人である。これらは事件の受理や処理の規模を考える材料にはなるが、地域別の被害率を計算するには、地域ごとの人口、対象となる事件の定義、集計単位などが別に必要になる。

統計の項目2023年2024年読み取れる範囲
受理された被疑事件の総数348135人358291人受理された人員の規模
既済となった被疑事件の総数330518人339315人処理が終わった人員の規模

なお、資料の表示には、2024年・2023年の数値とともに「201601-201612」という時期の記載がある。数字を比較するときは、年の表示だけでなく、表が示す対象期間や更新状況も確かめなければならない。時期の対応が曖昧なまま地域差を論じると、異なる期間の数字を比べる危険がある。

SNSを通じた被害は地域の境界を越える

徳島県警察の資料が示すように、SNS等に起因する犯罪被害は、地域の境界だけでは整理しにくいテーマである。接触はオンラインで始まり、金銭の受け渡しや実際の被害は別の場所で起きることがある。被害者、加害者、サービス提供者、相談・捜査機関が異なる地域にまたがる場合、単純な地域ランキングでは被害の経路を捉えにくい。

地域差を調べる際には、「発生地」「被害者の居住地」「受理した機関の地域」のどれを基準にしているのかを確認する必要がある。基準が違えば、同じ事件でも地域別の集計結果は変わる。

比べるなら、数字の背後にある仕組みも見る

犯罪被害率の地域差は、地域の安全を考える重要な手がかりになる。ただし、数字の高低だけで地域を評価するのではなく、何が数えられ、何が数えられていないのかを見極めることが欠かせない。

地域間比較でまず問うべきなのは、「どこで起きたか」だけではない。「誰が届け出たのか」「どの機関が受理したのか」「どの期間を集計したのか」「被害者数なのか、事件の受理人員なのか」。この確認があって初めて、地域差は安全の実像に近づく。

出典

https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003282729

https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003274055

https://www.police.pref.tokushima.jp/04anzen/p12046/index.html