同じ「事故件数」でも、数えている対象が違う
交通事故件数を読むとき、数字の大小だけを比べると、実態を取り違えるおそれがあります。警察庁の統計には、自転車が関係した事故を数える表もあれば、原付以上の運転者が第1当事者となった事故を数える表もあります。どちらも交通事故件数ですが、集計の対象と立場が異なります。
自転車について示されているのは、自転車が第1当事者または第2当事者となった事故を、相手当事者別に集計した数字です。一方、原付以上については、原動機付自転車以上の運転者が第1当事者となった事故を集計しています。つまり、自転車の数字は「自転車が関係した事故」の広がりを捉え、原付以上の数字は「第1当事者となった運転者側の事故」を捉えるものです。
2017年から2018年への変化
資料では、自転車が第1・2当事者となった交通事故件数は、2017年に90,407件、2018年に85,641件でした。2018年の件数は、2017年より少なくなっています。
原付以上運転者が第1当事者となった交通事故件数は、2017年に447,089件、2018年に406,755件でした。こちらも2018年は2017年を下回っています。
| 集計対象 | 2017年の事故件数 | 2018年の事故件数 |
| 自転車が第1・2当事者となった事故 | 90,407件 | 85,641件 |
| 原付以上運転者が第1当事者となった事故 | 447,089件 | 406,755件 |
この表から読み取れるのは、それぞれの定義に基づく件数が、2017年から2018年にかけて減少したということです。ただし、二つの行を単純に足したり、直接順位づけしたりすることはできません。自転車の集計は相手当事者との関係を含む分類であり、原付以上の集計は第1当事者となった運転者を軸にした分類だからです。
「第1当事者」は事故全体の被害を意味しない
交通事故統計を読むうえで重要なのが、第1当事者という区分です。これは、事故に至った主な原因がある側として整理された当事者を示す分類であり、負傷者数や被害の大きさそのものを表す数字ではありません。
たとえば、自転車が第1・2当事者として数えられている事故には、自転車同士の事故だけでなく、別の交通主体との事故も含まれます。相手当事者別の表を使えば、自転車がどのような相手と事故になっているかという構造を考えられますが、今回示された資料の数値だけから、事故原因や被害の程度まで断定することはできません。
同じように、原付以上運転者の件数は、飲酒別の表に掲載された集計です。しかし、ここで示される総件数は、飲酒の有無による違いを説明する前に、まず第1当事者となった事故を数えたものとして理解する必要があります。総数と内訳は、何を分母にしているかを確認して初めて意味を持ちます。
件数を安全の判断材料にするために
事故件数は、道路上で起きた出来事を把握する基本的な指標です。一方で、件数だけでは、交通量、利用者の構成、道路の形状、事故の重さといった違いを表せません。また、対象者の定義が異なる統計同士を比べる場合、数字の差がそのまま危険度の差を意味するとは限りません。
読者が交通事故の数字を見るときは、少なくとも次の三点を確認するとよいでしょう。第一に、何年の数字なのか。第二に、誰が第1当事者または第2当事者として数えられているのか。第三に、事故件数なのか、死傷者数なのか、あるいは別の指標なのか、という点です。
2017年と2018年の資料は、交通事故件数が一枚岩の数字ではないことを示しています。自転車に関係した事故と、原付以上運転者が第1当事者となった事故を分けて見ることで、統計は単なる多い・少ないの比較から、道路上のどの関係を数えているのかを考える材料になります。安全を読む第一歩は、数字の前に集計の境界を確かめることです。
出典
- 交通事故の発生状況 自転車(第1・2当事者)の相手当事者別交通事故件数の推移(道路の交通に関する統計・警察庁)
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003281527
- 交通事故の発生状況 原付以上運転者(第1当事者)の飲酒別交通事故件数の推移(道路の交通に関する統計・警察庁)
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003281516