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高齢者詐欺被害件数を読む前に――「被害者数」が見えない統計の空白

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件数を探すほど、別の数字が目に入る

高齢者を狙った詐欺は、社会の安全を考えるうえで重要なテーマです。しかし、被害件数を知りたい読者が統計を調べると、必ずしも「高齢者が何件の詐欺被害に遭ったか」という数字にたどり着けるとは限りません。

今回確認できた資料には、75歳以上の高齢者がいる世帯数、交通事故による死者数、インターネット利用時の被害に関する調査表などが含まれていました。一方で、高齢者の詐欺被害件数そのものを示す数値は確認できませんでした。

この違いは、単なる資料不足ではありません。安全統計では、何を被害として数えるのか、誰を高齢者として分類するのか、警察などに届けられた事案だけを扱うのかによって、結果が変わります。詐欺の被害者を個人で数える統計と、世帯を単位にする統計も同じものではありません。

分母が違えば、見える危険も変わる

2023年の全国の75歳以上の高齢者世帯における主世帯数は1,448万6,000世帯でした。これは高齢者世帯の規模を知るための基礎資料にはなりますが、詐欺被害件数ではありません。

たとえば、この世帯数を分母にして「被害率」を計算するには、同じ対象範囲の詐欺被害件数が必要です。被害者数、相談件数、認知件数、送金に至った件数のどれを使うかによっても、割合の意味は変わります。異なる定義の数字を組み合わせれば、数字は計算できても、実態を正しく表すとは限りません。

確認できた資料時期数値・内容詐欺被害件数との関係
75歳以上の高齢者世帯の主世帯数2023年1,448万6,000世帯高齢者世帯の規模を示すが、被害件数ではない
高齢者の人口10万人当たり交通事故死者数2018年5.59人交通安全の指標であり、詐欺とは別の分野
65歳以上人口2017年3,558万人高齢者人口の規模を示すが、詐欺被害者数ではない
インターネット利用時の被害に関する調査表2016年、2017年被害項目の表が存在詐欺に限定した件数や数値は、今回の資料情報にはない

「記録されない被害」も意識する

詐欺被害の件数は、実際に起きたすべての事案と一致するとは限りません。被害に気づかない、家族に知られたくない、相談先が分からない、相手を信じてしまい犯罪だと認識しないなど、さまざまな理由で公的な記録に残らない可能性があります。

反対に、相談件数は被害が確定した件数とは限りません。未遂の相談、家族からの問い合わせ、複数回の相談が含まれることもあります。したがって、「件数が多い地域ほど危険」「少ない地域ほど安全」と直ちに判断することはできません。

日本の読者にとって大切なのは、発表された数字の大きさだけでなく、その数字がどの段階を表しているかを確かめることです。これは国や地域が変わっても共通する読み方です。被害届、相談、認知、送金、回復といった段階が区別されているかどうかで、同じ「被害件数」という言葉の意味は大きく変わります。

今回の数字から言えること、言えないこと

今回の資料からは、高齢者世帯や高齢者人口の規模を確認できます。また、インターネット利用時の被害を扱う調査表が過去に作成されていたことも分かります。しかし、高齢者詐欺の被害件数、被害率、地域別の多寡、増減については、この資料だけでは判断できません。

安全を考えるとき、数字がない部分を推測で埋めないことも重要です。確認できない件数を「少ない」と解釈することも、「急増している」と断定することもできません。まずは対象年、年齢区分、被害の定義、集計単位、届け出の範囲をそろえる必要があります。

高齢者詐欺の実態を知るには、被害件数だけでなく、相談件数や未遂、被害の発見時期などを組み合わせて見る必要があります。今回の確認結果は、数字の不足を指摘するだけでなく、どの統計を比較すべきかを考える出発点になります。

出典

https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0004025637

https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003281572

https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003281573

https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003163936

https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003161409